「まってよ、レオンハルト!」



振り返ると息切れをした少女がそこにいた。

膝に手を置いて、ぜーはーぜーはーと苦しそうに下を向いている。

「早いって、ば…。」

「『自分のペースで歩いていい』といったはずだが。」

そういうとその真紅の目をキッとこちらに向ける。

「確かにそうは言ったけどね!私にも遊撃士として譲れない一線って言うものがあるの!」

それがこの歩幅なのか。本当にエステル・ブライトは見ていて飽きない。

「かといってこのペースで止められたら先に進まない。」

「そうだけど…」

もしかしたら根っこのところでは似た者同士なのかもしれない。

(でも、俺と似ているというより、『彼女』に似ている気がする。)

『彼女』もよくころころと表情が変わる子だった。実の弟の活発な部分もすべて彼女が持っていってしまったんじゃないか、というくらい。でも芯は決してぶれずにいつだって真直ぐだった。

(―――元気にしているだろうか。)

思い出せばもう3年位前の顔しか思い出せない。あの村は地図上からも姿を消してしまうことだってある。でもきっと元気にしているだろう。いつも通り、ハーモニカを吹いて弟と毎日を過ごしているに違いない。そうした物思いにふけっている間もエステルはひたすらに話しかけていた。

「それとーって、レオンハルト聞いてる?」

「…前から言おうとしていたんだが。」

「何?」

「レオンハルトじゃなくてレーヴェ、でいい。」

「レーヴェ?ってああ、呼び名?」 

レーヴェ、レーヴェ…何度かその名前を咀嚼したかと思うと、

「よぉし、レーヴェ!今日中に麓までいっくわよー!」

「行くのはいいが、速度は緩めないからな。」

モチのロンよっ!とどこか楽しげな少女の声が響いた。
























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またもや短いですが、ここらへんからレーヴェも楽しんできている様子です。








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