「エステル!大丈夫?!」

「!!!」

その日、私は怪我をした。精々子どもが上れるくらいの木から落ちたのだ、大した怪我ではなかった。でも、家に来てから今まで心配などしてくれなかったOOOOが初めて自分の心配をしてくれた。

「?どこか打ったの?!」

「だって…―――が」

「僕、が?」

―――初めて私の名前を読んでくれた!

初めは目も合わせてくれなかった。口もきいてくれなかった。初めのころは口をきくにしても敬語だったり(また敬語をやめるように言うのも一苦労だったり)。ここ最近、出かける時はついて来てくれるようになったけど、それでも名前を呼んでくれることなんてなかった。



「―――!」

「う わっ!」

勢いよく抱きつくと、予想が出来ない行動だったからか彼はエステルを支えきれずに倒れてしまった。木々がさわさわと流れるように音を立てる。鳥のささやきも、周りのすべてが心地よく感じた。

「エス、テル?」

今のこの気持ちを周りの人たちはなんというのだろう。

幼い頃の自分はその気持ちの名前を知らなかったが、今のこの気持ちがあれば、これからどんなことがあっても彼と歩いていける気がした。







トントン。

誰かが自分の眠りを妨げようとしている。

「こんなところで寝ていたら風邪を引くぞ。」

―――誰、だろう。

「寝るのは一向に構わないのだが、さすがに遊撃士だったら時と場所を選ぶべきじゃないのか?」

「…あ。」

気がつくとすでに日は高く、10時くらいに差し掛かるのではないかというくらいだった。

「や、やっばーーー!!!」

待ち合わせは朝、帝国の遊撃士の仕事が終わった後とのことだったのに、どう考えても遅刻も遅刻。頭の中に仁王立ちした姉弟子の「もし、リベールの遊撃士の品度を損ねるようなことがあれば…どうなるかわかってるわね?」という声とピシリという鞭の音が聞こえた。もちろんそんなこと彼女は言っていなかったが、このままでは非常にまずい。隣に置いていた自分の荷物一式を手にとり、急いでエレボニア支部へ向かおうとした。

「ちょっと待った。」

「ごめんなさい急いでいるんですお礼はまた今度させてくださいこのままじゃ―――」

「いいから落ち着け。お前は、エステル・ブライトじゃないのか。」

・・・・・・・。

「そうです けど。ええっと、どちらさまでしょうか…?」

目の前に立つその青年は白髪で、赤い目をしている。顔は、よく判らないが友人たちが騒ぎそうな顔をしていると思う。身長は高い部類に入るのではないだろうか。身体も無駄に肉がついておらず、かといって筋肉が隆々としているわけでもない。むしろ、全身がしなやかである印象すらある。そしてその腰には、剣。

―――剣?

「―――あぁ、自己紹介がまだだったな。俺はレオンハルト。

主にエレボニア内でしか活動してないが…遊撃士だ。」

「エ、エステル・ブライトです…。」

さ、と差し出された手を呆然として握り返し、「行くぞ」と連れて行かれる。その手は父に似て、誰かを守ることを使命としている人の、その手だった。






















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レオンハルトの登場。

ゲーム中、目指していた遊撃士にはなれなかったので、ここで。

彼は、カシウスに並ぶくらいの凄腕だと思うのだけど。








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