(…どうしたんだろう。)

少年はエステルを見つめたまま動こうとしない。そしてエステルも動くことができない。

「―――ヨシュア、さすがに初対面の人にその態度はないんじゃないのか?」

戸惑っていると、横から助け舟が入った。やはり呆れたような口調ではあるが、どこか楽しそうでもある。

「え、あ、ごめん。あの、ちょっと知り合いに似ていて、その。」

「知り合い?村に似たやつがいたか?」

え、いやそうじゃなくて、としどろもどろの少年がなんだか妙に懐かしくてつい笑ってしまった。二人の視線が一気に自分に向けられるのが分かった。

「あはは、ごめん!えーっと、私はエステル・ブライトよ。リベール王国で遊撃士として活動してるの。」

よろしく!と手を伸ばすと、おずおぞと手を握り返された。

(―――この子。)

たぶん相当の腕前なのだということが分かった。その手は剣をもつ人の腕だった。

「ヨシュア・アストレイ、です。」

恥ずかしがりやなのか、一向に瞳をあわせてくれないが、こういうことは癖のようなものなので、仕方ないのかもしれない。

「あいさつも終わったみたいだな。そろそろ村へ向かうぞ。」

そういってレオンハルトは最短距離だ、といってまた藪道に入って行く。

(また藪道なのね…)

さすがにうんざりしながらも、自分に与えられた選択肢のなさに頭を抱えずには居られなかった。



そういえば、さっきの彼、どこかで見たことがある気がした。

(ヨシュア・アストレイ。―――ヨシュア か。)

漆黒の髪、そして琥珀の瞳。

どこかで見たことがある気がするのだが、思い出すことが出来ない。

頭に霞がかかっているような気さえする。

ちら、と後ろを振り返ると目が合った。サッと視線をそらされ、少しむっとしてしまったが、やはりどこか見覚えがある気がした。

(やっぱりどこかであったことがあったかなー…。)

そうは思うのだが、彼はうつむいたままだった。
























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案外ひとみしり設定。










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