走って花園の入り口まで行くと、レオンハルトが柱に寄りかかり、目を閉じている。
走るのをやめてゆっくり息を整えながらそばまで行くと、ただ目を閉じていただけだったのか、そっと目を開け、そばまでゆっくりと歩いてきた。
「走る必要はあったのか。」
「だって…っ、あーもう疲れたっ!」
花園は迷路のようになっており、すぐに出れるというものでもない。ゆっくり散策するのには適しているとは思うのだが、急いでいるときは限りなくめんどくさいものだった。案の定、エステルは迷ったわけだが。
「あんな簡単な迷路で迷うとはな…。」
「わるかったわね…。」
記憶力がいいわけでもないので大体直感で突き進むエステルにとって、こうした多少でも頭脳をつかうことはあまりしたくはない。それを姉弟子であるシェラザードにもよく注意されていたのだが、いまだにそれは治りそうもない。
「…まぁいい。今日までにハーメル村の近くまで行くぞ。村は山間にあるから一日使うくらいでいかないといけないからな。」
「え、ああ。うん、分かった。」
今日、一日中歩いているというのにその足取りは疲れていないみたいだった。その体力に少々感動し、自分の体力のなさに少し落ち込んでしまう。
「男女の差、というのは」
「…え?」
「男女の体力の差は仕方のないものだ。あまり悩むな。」
歩きをエステルに合わせてくれているのが分かる。この調子ではハーメル村の近くまでいけるか分からないが、自分が出来ることは一つだと思った。
一歩一歩確実に前に進むこと。
そうすることで、『彼』に近づけるような気がした。
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ここで切り替えが入ります。
ようやく下準備がととのいました。
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