「護衛の依頼?」
シャワールームから出てきたエステルは髪を大雑把にごしごしと拭いている。長い髪からは水滴がぽたぽたとこぼれているが、ヨシュアが呆れた顔でいたのをみて、急いで髪をくくった。
「そう、遊撃士協会に届いたものじゃないから非公式のものなんだけどね。」
「・・・それ、いいの?」
手紙から目を離してエステルを見ると、不審そうに手紙を見ている。考えればそうだ、いつの間にか手紙を持っていて、その依頼を受けるなんて『彼』らしくない、とそう視線が物語っていた。
「―――どうしても受けないといけないような気がして。」
“どうしても”という言葉にエステルが反応したのはヨシュアも目に入っていただろう。お互いのかすかな反応すら分かってしまうのは、2人が共に過ごしてきた年月とその絆の深さを表しているようだった。
(やっぱり難しいかな。)
この依頼に対する自分の感情がいつもと違うのはヨシュア自身気がついている。それでも、不思議と自分から依頼を受けない、という言葉が出てこない。自分からは『この依頼は怪しすぎる。やめておこう。』たったソレだけが出てくるのを全力で拒絶していた。だからこそ、エステルからストップがかかるだろう、むしろそうしたほうがいいと思っていた。だから、
「・・・わかったわ。」
「え?」
エステルからそういう言葉が出てきたことに驚いた。
「エステル、」
「なに、その顔ー?」
ケラケラと楽しそうに笑っているが、先ほどまでの神妙な面持ちはどこへいったのか、と思うほどの変貌振りだった。いや、もとに戻ったというほうが正しいのかもしれない。
「この依頼、変に思わないの。」
「変?そうね、そう思うけど―――」
じゃあなんでそんなにいつも通りなの。そのセリフが喉まで競りあがってきた。
「ヨシュアに何かあったらあたしが守ればいいんだし。」

(―――!)

たったそれだけの言葉が、胸にストンと素直に落ちてくる。
エステルは相変わらずニコニコしているけど、もう正面でエステルを見続けられない。
(これ、無意識なんだよなぁ・・・)
こういうのは昔からだったけど、本当に性質が悪い。
「まったく・・・」
エステルにはかなわない。
何百回目のセリフをはいた。




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