屋上の庭園で、彼女は眠っている。
起きる様子はない。だって、たった今自分が眠らせたのだから。
そっと頬を触ると、暖かな人の体温を感じた。
―――ああ、生きている。
それが涙が出るほど嬉しいことを自分は知っている。
このまま何事もなく、彼女のそばで笑っていたかった。
それを多くの人に許してもらい、自分はその資格を得たと思っていたのに、
(結局、全部幻だった。)
手をするり、するりと抜けていくその感覚を、嫌というほど味わい、それを与えた人物はそれをおいしそうに咀嚼していった。
結局手元に残ったのは、ハーモニカと傷跡。
その傷跡はじくじくと自分の存在を主張していたというのに麻痺したようにその痛みを感じなかった。自分も気がつかない振りをしていた。
目を背けるな。
ケリをつけないといけない。
これが終わった後、自分は生きているか分からない。
でももし自分が生きていてもいなくても目の前で眠り続けている彼女にはしあわせに生きて欲しいと思う。
それを祈りながら、眠り続ける彼女のまぶたの上に、彼女のしあわせを祈りながらそっと、