自分の選んだ道が、正しいとは思ったことはない。
後悔はしていない。
でも、これはきっと『まっとうな人間』が送る生活ではないと、そう思っている。
昔の自分が、今の自分を知ったら、確実に蔑むだろうというのは、心の奥底で理解をしていた。
あの戦争ののち、自分と唯一の生き残りであるヨシュアは、暗く長い道をただ導かれるままに逆らうこともなく従順に歩いていた。いや、ヨシュアの場合は従順に歩くしか道はなく、その手を引いていたのはワイスマンと、紛れもなく自分だった。
そのせいでヨシュアは今も苦しんでいる。
それが元を正せばワイスマンの画策だったとしても、それに抗うことなくヨシュアを差し出してしまったのもまた自分なのだ。ワイスマンだけに責任があるわけではない。
ヨシュアがああなってしまったのは、自分のせいだといえるだろう。
カレンにヨシュアのことを任されたというのに、その方向を間違ってしまった。
しかしヨシュアはエステル・ブライトと共に道を歩んでいる。
決して平坦な道ではないのは彼らが一番理解しているだろう。
(しかし、彼らなら或いは)
一歩歩くと、長く自身の相棒として共に歩んできた剣はこれから起こる戦いに震えているように、カチャリ、と音を立てる。そっと柄を握ると、馴染んだそこが、自分が歩んできたこの修羅の道を物語って居るようで、薄く笑ってしまった。
後ろをみるとそこには滅んだ街、そしてどこまでも続く、嫌なくらい澄んだ空。
―――吐き気がする。
あの日、戦いが終わって喜ぶ大人たちを見て、そう思った頃があった。
何も終わってなどいない。
自分の周りの大切な人たちは皆、いなくなってしまったのだから。
剣を離し、己の手を見る。
「これが正しいと思うか?」
カレン―――。
その言葉は風に乗り、空高く消えていった。
そして、