--グリルパルツァー--
(Franz Grillparzer フランツ―)オーストリアの劇作家。宮廷の文書課長を経て上院議員となった。1817年悲劇「祖先の女」によって大成功を収めて以来、その作品は次々と帝室劇場で初演された。「サッフォー」(1818)では偉大なギリシャの女流詩人の姿を借りて世間の人々と感情を分かち合えない精神人の苦悩を描き、高い評価を得た。 主な作品:芸術と人生との対立を描いた悲劇「サッフォー」ほか、「金羊毛皮」「海の波恋の波」「哀れな音楽師」など。(1791〜1872)
--------------------------------------------------------------------------------
この世の幸福とは何だろう?――それは一つの影にすぎない。
この世の名声とは何だろう?――それは一つの夢にすぎない。
―「金羊毛皮」―
・その息吹に触れるすべてのものを気高くする、これこそ愛の魔力。
それはまるで、金色の光で黒い雨雲さえ金にかえる太陽のよう。
―「ザッフォー」―
・すべての誤りには三つの段階がある。
第一は、誤りが生まれる段階。第二はそれを誤りと認めようとしない段階。
第三は、もはや取り消そうにも取り消せない段階。
―「遺稿」―
・自分の限界を知る者こそ自由な者である。自分を自由だと妄想する者は、その妄想の奴隷である。
―「リブッサ」―
・負けいくさも次に勝てば埋め合わせがつく。失敗作も改良できる。
しかしいったん否定されるともはや取り返しのきかないものがある。それは威信である。
―「現代史のために」―
・手の上なら尊敬のキス。額の上なら友情のキス。頬の上なら満足感のキス。唇の上なら愛情のキス。
閉じた目の上なら憧憬のキス。掌の上なら懇願のキス。腕と首なら欲望のキス。
さてそのほかは、みな狂気の沙汰。
―「接吻」―
・ああ、習慣とはやっかいなもの。いまわしいと思うものにすら身を縛られる。
・謙虚は一つの装飾である。ところが人はこの装飾をしないで外を出歩く。
・生きることがもちろん人生の最高目標である。
―「ザッフォー」―
・賢明に思慮をめぐらし、愚かに行動し、私は一生の日々を送った。
―「箴言と警句」―