お ま け
カラン、と落ち着いた音楽が流れる室内に一人の女性が入ってくる。周りからはホゥ、といった声や珍しいものを見るかのような視線が送られる。しかしその女性はにこりともせず、カウンターに座っていた赤毛の青年の隣に座った。どこかで舌打ちが聞こえたかもしれないが、赤毛の青年は聞かなかったことにする。
「ふぅ・・・マスター、ジンをロックで。」
はい、と言ったマスターはこの空間に違和感なく存在していた。むしろ浮いているのは俺たちか、とすこし笑えてしまう。
「・・・おい、シェラザード。」
「なに?」
「あいつらの部屋、見に行ってきたんじゃないのか。」
「・・・そうね、相変わらずっていうか。」
頼んだ酒を待っているシェラザードは話しかけられた理由がすでに分かっているのかあからさまに不機嫌そうに反応を返す。
「・・・?」
頼んだ酒がきて、次の瞬間には半分飲み終わっている。どんだけ飲むんだよ。さっきも食事中にのんだのにまだ飲み足りないのか。・・・飲み足りないんだろうな。
「仲良く抱き合って寝てたわよ。」
「・・・・・・おい。」
カラン、と氷が音を立てる。そのことがつまらなそうに、氷をじっと眺めていた。そしてグッとグラスを握り締める。たぶん周りには聞こえていないが、ミシッて音したぞ、ミシッて!
「ええ、抱きあってって言うのには語弊があるわね。服を着て子どもみたいに抱きしめあって、っていうのが正しいわ。」
どこかイライラした様子は隠しきれていない。もし“なにか”あっても怒るくせに、何かなくても怒るなんてどう考えてもヨシュアに同情をせざるを得ない。
「・・・ハァ」
盛大なため息をつくアガットを見もせずに近くにおいてあったナッツを食べる。すごい勢いで。ナッツは主食じゃない。つまむためにあるのに、もうなんでもアリかこの女。
「まぁいいんだけど。明日はどうやってからかってやろうかしら?」
クイッと酒を飲み、次をオーダー。この勢いだと、今日の報酬の半分を飲みきってしまいかねない。程よく暗い店内に、シェラザードの何かを企んでいる微笑は非常に凶悪に映る。・・・もちろんそんなこと口が裂けてもいえないが。
「・・・ほどほどにしとけよ。」
「それはお酒のこと?」
「・・・勝手にしろ」
なんだかひどく疲れた気分だった。
や、やっと終わりました。
砂漠の雪、でなにかかけないかと思って書き始めたんですが、不発に終わりました。いい歌なんですけど、あんなの枕元で聴こえてきた日にはトラウマになるような気がする。・・わざとか!(ちょっと黙って)
本当はもうちょっと暗い感じに終わらそうと思ったのですが、結局私もエステルに流されてしまいました。扱いにくいなー・・・。あと、時期はあまり考えていません。1でも2でもどっちでもいける気がするけど、ご想像にお任せします。おまけのアガットは正直すまんかった・・・。
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