花びらの枚数を数えてから、花占いをはじめるのは反則だと、通り掛かったジョニーに笑われた。
つんとすまして聞こえないふりをし、そ知らぬ顔で花びらを地面に落としはじめる。
好き、嫌い、好き…呟いていると、面白そうに見ていたジョニーが隣に腰を下ろして歌いはじめた。最近新調したばかりだという、ジョニーお気に入りの楽器が奏でる音楽は、聞いたこともないでたらめな旋律のようなのに、不思議と耳に心地いい。ほんの少しだけ目を閉じて歌に耳を傾けてから、チェルシーは気合いを入れ直すように息を一つ吐いて、残り少なくなった花びらに指をかけた。
「チェルシーは本当に、あの王さまに恋してるんだなぁ」
恋歌を歌い終えた旋律をそのままに、ジョニーはチェルシーの手元をちらりと盗み見た。好き、という言葉と共に花びらが一枚舞い、残りが二枚。数えたのだから当然といえば当然だが、占いの結果はチェルシーが望んだ通りの答えを出すだろう。
「はい、もちろんです!」
弾むような軽やかな声は、迷いも澱みもなく肯定を返し、清々しいばかり。ジョニーは僅かに自分が汚れちゃったような気分になった。
そんなジョニーには構いもせず、チェルシーは最後の一枚を風に乗せる。同時に残った茎を両手を上げて放り投げ、万歳をするように立ち上がった。
「好き!」
「ああ、どうやら両想いのようだ。良かったなチェルシー」
「ありがとうございますぅ!」
振り向いたチェルシーの顔が、あまりにもキラキラと輝いていたので、からかうために用意していた言葉はそっと胸にしまい込み、少し目を細めてジョニーは笑った。
楽器の弦を機嫌良く爪弾き、歌うように呟く。
「こりゃまた、良い恋歌が出来そうだ」