いい音がした。
気持ち良いほど豪快で爽快な、よく耳に残る音だった。
彼は驚いたように目を見開いて、そしてそっと自らの頬に触れた。見る見るうちにそこに赤い手形が浮き上がる。
問い掛けるような目を向けられたのでとびきりの笑顔で返す。彼は困ったような笑顔を浮かべた。
彼の頬を打ったのは自分の右手だ。この日の為に、こっそり平手打ちの練習をしていただなんて言ったら、彼はどんな反応をするだろう?
それにしても、ああ、これでようやくすっきりした。
もういつ目が覚めても悔いはない。





夢で逢えたら



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