ともだち、と、声には出さず呟いてみた。
途端なんだか胸糞悪くなって、腰から外していたシャルティエを床に放り投げた(というか叩き付けた)。痛みなどないだろうに、シャルティエは酷く痛そうな悲鳴をあげて床で軽く跳ねた。耳障りな音がした。
何するんですかとか文句が聞こえたが無視する。何するも何もない投げたくなったから投げたそれ以外に何がある察しろ。無言で見つめていると最後に憐れっぽく文句を口にして、結局シャルティエは黙ることを選択したようだった。
投げ捨てたシャルティエから視線を外して窓に歩み寄り、閉めたままだったカーテンを引き開ける。外は薄曇りで天気は良くも悪くもない。少しだけ風が強く肌寒く感じるが、震えるほどではないだろう。部屋は二階で、観光地の宿屋だけあって窓から見える景色は悪くない。けれど、彼は少しも表情を緩めず不機嫌そうに窓の外を睨みつけていた。
外にはあの田舎者の姿がある。
落ち着きなくあたりを見渡し、隣にいるルーティを呆れさせていた。時折剣を見下ろしているところから見て、ソーディアンにも話しかける、あるいは注意されているのかもしれない。あれが旅の仲間だと思うと眩暈がする。さっさと目的を果たして縁を切りたい (そう思うのに、確かにそう思っていたのに)。
気付かれると厄介だと、ふと思いついて窓辺を離れようとしたまさにその瞬間、運悪く田舎者が窓を見上げた。ばっちり目が合った。次の瞬間には全身で存在を主張して、諸手をふって彼の名前を大声で呼ばわる。ルーティが止めるがお構いなしだ。苦虫を噛み潰したような心地で、彼は踵を返した。
窓辺を離れ、沈黙したままのシャルティエを拾い上げる。その際「坊っちゃん」と呼びかけられたが、一瞥しただけで答えなかった。シャルティエは再び沈黙する。
しっかりと腰にシャルティエを佩き、先ほどよりも大きくなった呼び声にイラつきながら部屋を出る。
はやく降りてあの馬鹿に鉄槌を見舞ってやらねばならない。
部屋を出る前にもう一度中を振り返った。
先ほど自分が落とした呟きは、目に見えずそこに転がっている。冷ややかな視線をそれに投げて、彼はただ静かに扉を閉めた。
「リオン!!」
馬鹿が呼んでいる。閉めた扉に額をつけて、彼は力なく瞬きを繰り返した。
「ともだちなんて、」




不必要、なのに


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坊っちゃんー。キャラおかしいですねはいそうですね。
PS版やってないわたしから見て坊っちゃんの印象は意地っ張りの青少年ですから。(追記・PS版はもう少しカッコイイ、かもしれないですねハハハ)(おまえ)
ところで観光地ってどこだろう(死ねよ)