バスケットの中身はサンドイッチだった。
相変わらず豪快に切ったパンに、これまた手で千切ったままの野菜を挟み、切った様子のないハムは片端から微妙に垂れていた。玉子やトマトを挟んでいるらしきものもある。差し出してきたティアは、ルークの視線に気付くと僅かに頬を染めた。引っ込めそうになるのを慌てて制して、彼は一番大きな一切れを口に入れる。
おいしい。
正直にそういうと、ティアはまた少し赤くなって、そう、と呟いてそっぽを向いてしまった。
ミュウが膝の上に上ってきて物欲しそうに見ていたが、無視する。
これは俺のだ。
ティアはまだ向こうをむいていてルークたちの様子には気付いていない。だからしばらくはその味はルーク一人のものだ。
いつもティアに優しくしてもらえて羨ましいから、なんてそんな気持ちは一切ない。サンドイッチを一気に口の中に入れながら、ルークは自分に言い聞かせるように考える。今日一緒に出かけると聞いて、昨日の夜はろくに寝れなかった。だから今朝寝坊してしまって朝ご飯を食べていないのだ。そのせいでおなかが減っていて、ミュウに分けてやるほどの余裕はない。なぜ眠れなかったかは、この際考えない。緊張していた。それでいい。
サンドイッチに注いでいた視線をふと上げると、ちょうどこちらを向いたティアと目が合った。ルークは思わず食べるのをやめ、ティアも居住まいを整えるように真っ直ぐルークを見た。お互い二、三度瞬きをして、どちらともなく微笑みあう。
膝の上のミュウが嬉しそうに飛びはね、仲良しですの、と水を差す。
それで照れてしまったルークは片手でミュウを投げ捨て、ティアに怒られた。
彼女の顔に赤みが差したままだということにルークは気付いていたが、もう怒られたくないので黙っておくことにした。





小春日和に



戻る