いたずらを思いついた。
二人して丘の上に寝転がって、千切れ雲を眺めながら相談した。
いまなら誰もいないから、逃げてしまおう。

手を繋いでずっと来た道を、コレットはふと振り返った。
押しつぶした草が倒れて、獣道になっている。その奥に人の姿は見えない。誰も追っては来ていない。安心したような、物足りないような気持ちが胸のうちでくるくると巡り、やがてそれは溜息となって足元に落ちた。一緒に立ち止まっていた青年がそれに気付いて、柔らかく声をかける。
「もう、やめよっか。コレットちゃん」
見上げると、優しい微笑を視線が捕まえた。
「戻ろう。ロイド君が心配する」
「駄目だよ、ゼロス」
思わず口にしてしまって、どうして駄目なのかは自分でも判らないことに気がついた。
でも、彼が見つけるまでは戻ってはいけない気がするのだ。
ぎゅ、と手を握ると、青年は少しだけ泣きそうな表情になった。そんな表情を見たかったわけではなくて、だからコレットは黙って再び獣道を進み始めた。隣を歩く青年は、何も言わずについて来る。

「みつけてくれるよ」
「どうかな。俺さまは無理だと思うけど」
「きっとだいじょぶだよ、ね、行こう」
「やれやれ、お供しますよ、おひめさま」

半時間前に交わした言葉が蘇る。
どうしたってロイドならきっと見つけてくれると、コレットは信じたけれど、ゼロスは否定して笑った。それが悔しくて、いたずらを思いついた。ゼロスも頷いた。
だから今、手を繋いで逃げている。

「コレットちゃん、」
「嫌だよ、ゼロス」
「…ごめんな」
「いやだよ…」
「ありがとう」

鼓動が早まる。呼応するように、足も速まった。逃げたくて仕方なかった。信じたくなかった。
手の平から、温もりがすり抜けて消える。握り締めるのは、ただ自分の手の平だけになっていた。
分かっている。ゼロスの声はもう、コレットの心以外を揺らすことはない。
誰にも届かない。

「コレット!」

握った手の感触が消えるのと同時に、同じ手を後ろから掴まれた。ぐいと引っ張られて後ろを振り向くと、焦った顔をしたロイドと目が合った。全力で探して、追いかけてきてくれたのだろう、とても息が荒く額から頬に汗が流れている。その目がどうして、と問いかけてくる。
コレットは笑った。
どうしようもなく笑った。泣くことさえも許されないのだと気付いてしまった。

「嘘つきロイド。また間に合わなかった」






嘘つきの行進

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ロイド君可哀想。コレット酷い。ゼロスはもっと酷い。
別人とかもう気にしない。
このロイド君はきっとクルシスの輝石壊していないでしょうね。