気がつけばベッドで眠っていた。
どこからが現実でどこからが夢なのかわからない。
もしかしたら今も夢ではないか、ではいつになったら夢から抜け出せるのかわからない。
逃げろ。
聞こえたのはただその言葉。女性か男性か、わからないが『逃げろ』という言葉だけが耳に残っていた。あとは男女関わらずの断末魔というべき叫び声と肉を斬る音だけ。姉の手の温かさだけがなんとかそれが現実だと教えてくれていた。
(逃げろって、どこに?)
走った。
ただがむしゃらに走った。
どこにいけば助かるのか、どこにいけばまた笑って過ごせるのかわからずにただ走った。途中で見つかりそうになった。何から逃げているのか分からなくなっていた。
(助かる場所なんてあるの?)
しらないひとがじゅうをかまえていた。むけられているのはぼくとねえさん。にげるばしょなんてない。もうだめだぼくたちはしんじゃうんだ。いつもたすけてくれたレーヴェはいない。とうさんかあさんもいない。(だってとうさんかあさんはさっき、)
しらないひとはわらっている。どうしてわらっているんだろう。
(なにもおかしいことなんてないのに)
ベッドの上に寝ているのはぼくだけ。レーヴェは泣いている。レーヴェが泣いているのを見たのは初めてだ。
どうしてぼくだけ寝ているんだろう。レーヴェ、姉さんは?
(本当は知っているのに)
どうしてこんなことになったの?
(そんなのだれもわからないのに)
ねぇ、
どうして喋れないの?
どうしてなにも感じられないの?
どうしてぼくは、生きてるの?